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3位『真・雀鬼3 東西麻雀決戦』

元宮崎県知事・そのまんま東、Vシネマの常連・下元史朗、仮面ライダーBLACK・倉田てつを、そして後のマスター・高橋和興が一堂に会する、豪華すぎるキャストの回。サブキャストも、律子役の由良宜子、西村の師匠・渡辺役の岡崎二朗、ローワンカンダー・花岡正明(雀鬼会)、そしてナレーションは松山鷹志とスキがない。成功するべくして成功しただろうという回だと言える。

物語自体は、関西のヤクザグループが関東の麻雀利権を奪いにいくというごくシンプルな内容だが、役者達の好演がこの物語を何十倍にも面白くしている。

立花竜(演・そのまんま東)は関西一の代打ち屋。強い相手と麻雀を打つのが好き、曲がったことは嫌いという、まさに雀鬼の相手に相応しい、少年漫画に出てきそうなキャラクターだ。妻の律子(演・由良宜子)も確かな腕の持ち主で、物語の序盤は夫妻で関東の代打ちを次々となぎ倒していく。が、ここで問題発生。桜井が依頼主からの代打ちを全て断り、竜は当面桜井との直接対決ができなくなってしまう。その後竜と律子は黒沼グループ[関東の麻雀利権団体]の2代目である鮫島(演・高橋和興)に勝ち、関東一の代打ち・桜井を除く関東の強豪を全て倒すも、強い相手との対決を望む竜は、非公式に桜井に勝負を挑んでしまう(この勝負は、律子の支援がないと勝てなかった竜が負けを認める)。このことが関西グループのまとめ役・三上(演・下元史朗)の逆鱗に触れ、夫妻のコンビは解散。以降はその三上と竜がコンビを組むことになる。その頃鮫島は、黒沼2代目の座を放棄し実業家となった西村(演・倉田てつを)の元へ、黒沼を救う助けを求め強引に直談判する。鮫島は一旦これを断るも、桜井に出場の許可を取りに伺う。止めても無駄だと悟った桜井。しかし当日、勝負の場へ決死の覚悟で向かおうとする西村を、駐車場で待ち伏せしていた桜井は殴打する。そして次のセリフ。

お前を…死なせるわけにはいかん!

連続出演できた喜びと、本当は闘牌シーンをやりたかった無念が入り混じる複雑な表情を浮かべるてつを。歴代で唯一ライダーを2期に渡り務め上げた、その実力は伊達じゃない。

西村が来るのを誰もが予期していたところへやってくる桜井。「何の用でっか?」「西村の代打ちだ…」まさかの”代打ちの代打ち”にビビり倒す一同。

この場は”ご本人”(今回は立会人役)の承認により丸く収まり、「はからずも」東西対決は実現した。東のもう一人の打ち手は梶原(演・花岡正明[雀鬼会])。実はこの男、東側と見せかけ、三上のオヒキであった。このことに腹を立てた竜は、四開槓で三上の手を潰してしまう(この時桜井既にリーチ)。そして次のセリフ。

竜「スーカンは、流れやったな、確か」

三上「(竜に対し)おんどれどういうつもりや!」

竜「何がですか?」

三上「何がやと。おんどれ何とぼけとるんじゃ」

竜「わしがカンせえへんかったら、次のツモで桜井はん、あがっとったかもしれへんで!三上はん。あんたの腕もボンクラになりましたなあ」

三上「なんじゃあ!」

竜「このままで終わらすわけにはいかんのじゃ!三上はん、そしてそこの梶原さん。こんなええ舞台で、勝負師の血騒ぎまへんか?」

この一連のやりとりが梶原の勝負師としてのプライドを大きく揺るがした。ここに東西対決の図式は崩れ、勝負はプロとしての意地を賭けた戦いに入っていった。そして激闘の末、桜井が勝つ。この回は麻雀の内容も神がかっていた。桜井、竜、三上、そして梶原。四人全員がシビれるアガリを見せ、端役は誰もいない。面白れえ、面白すぎる野郎だぜ。(※1)

※1 「真・雀鬼13 闇のプロフェッショナル」の殺し屋・金田(演・又野誠治)のセリフ。

2位『真・雀鬼14 プロ雀士秘話!オーラスの向こう側』

おそらく雀鬼ファンの統計を取ったら、これが1位になるのではないだろうか。この雀鬼シリーズに何度も登場している名俳優・長門裕之が、最も光り輝いていた回がこれだと思う。その長門演じる牧野と、その弟子である矢部(演・片岡宏貴)の掛け合いがあまりに素晴らしく、かれこれ40回以上は見ている。牧野と矢部はかつて「浜の龍虎」として恐れられたコンビ打ちの雀士だった。引退後矢部は会社の経営者となるも、大規模な手形詐欺に遭い、会社の復活を麻雀に賭けようと試みる。そこに現れたのが、かつてのコンビ・牧野だった。以下は矢部の社長室での掛け合い。

牧野「負けたらどうするんだ」

矢部「やる前に負けること考えるバカはいねえって教えてくれたのは兄貴じゃないですか…どっちにしろあとはねえんだ、やるしかねえ。これまでだってデカい場でシノいできましたから大丈夫ですよ」

牧野「独りでシノいで来たわけじゃねえだろう」

矢部「そんなことはわかってますよ…でもやるしかないんですよ!」

牧野「できっこねえんだよ!テメエ独りじゃ!」

矢部「じゃあどうすりゃいいんですか!このまま会社が潰れるのを、指くわえて観てろってんですか!ええ!」

牧野「だから独りじゃ無理でも…二人なら大丈夫じゃねえか、って話よ…… 浜の龍虎の復活だ。テメエは面のこと片付けて俺んとこ来い。錆びた腕、磨かねえとな。」

牧野「兄貴…」

この回の面白いところはそれだけではなく、語りだすと全編に及んでしまうのだが、誌面の都合上、断腸の思いでカットする。長門さん、本当にありがとうございました。

1位『真・雀鬼8 確率五分の一の死闘』

映えある第1位は「確率五分の一の死闘」。いつもの中倉健太郎に代わり大久保貴光が松岡大悟役として出演し、そのかつての友人である金城(演:加勢大周)が活躍する回だ。そして、雀鬼・桜井章一本人が最も活躍するのもこの回。今回は「ツネさん」という、かつて伝説の雀士だったであろう浮浪者として出演している。この回は、麻雀がどうこうというよりも、人間とは何たるかと視聴者に問いかける、重い回だ。話の始まりに主人公・桜井が磐田(演:寺田農)という雀士を倒し、すぐに彼は抹消された(ヤクザの代打ちは、負けたら抹消されるというのはごく普通だそう)。命を賭けて打ち続けてきた桜井が、麻雀に命を賭けて打つことの意味に疑念が生じ、マスターに相談しに行く。「麻雀がちょっと…嫌いになりそうなんだ。」桜井らしくない発言に、戸惑うマスター。シーン変わってツネさんのところへ。ツネさん・その浮浪者仲間との一局の後の発言が感慨深い。

麻雀なんてなあよぉ…命を賭けて打つほどのモンじゃあねえよ…

命の方が大切に決まってらあな。

いや、あなたがそれ言いますか、と盛大なツッコミをしたくなるところをぐっと抑えよう。10回、いや20回見ればだんだんと真価がわかってくる。

物語は、ダイゴと金城が名古屋の「特別室」なる、トンデモルールの卓で勝負をし、そこに雀鬼が助太刀に入り、見事救い出すことに成功する。ここまでは想像に難くない。が、最後のシーンが素晴らしい。勝負を終え、桜井、再びツネさんの元へ。「今、茶入れてやるからな。今日は大福もあるぞ。」優しく桜井を出迎えるツネさん。「ツネさん、俺…」何か言おうとする桜井。「食いなよ…」大福を差し出すツネさん。そして最後の名台詞。

章一!!…. 食わなきゃ、始まんねえじゃねえかよ….なあ。

頷き、大福を食う桜井。暗転。そしてエンディング。

章一が章一に「章一!!」と喝を入れる名シーン。そして命を賭けた闘いを乗り切った男が、黙ってものを食うシーン。こういうのが観たかったんだよ。

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